1.1.3 高度なフィルタ設計

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第1章: 高度な電気回路理論

1.1 高度な回路解析

1.1.3 高度なフィルタ設計

フィルタは、特定の周波数帯域の信号を通過または減衰させるための回路です。高度なフィルタ設計では、理想的な周波数応答特性を得るために、複雑な設計手法と解析が必要です。本節では、一般的なフィルタの種類とその設計方法について詳しく説明します。

フィルタの種類

  • ローパスフィルタ (Low-Pass Filter, LPF):低周波成分を通過させ、高周波成分を減衰させる。
  • ハイパスフィルタ (High-Pass Filter, HPF):高周波成分を通過させ、低周波成分を減衰させる。
  • バンドパスフィルタ (Band-Pass Filter, BPF):特定の周波数帯域を通過させ、それ以外の周波数帯域を減衰させる。
  • バンドストップフィルタ (Band-Stop Filter, BSF):特定の周波数帯域を減衰させ、それ以外の周波数帯域を通過させる。

高度なフィルタ設計の手法

1. 伝達関数の設計

フィルタの設計は、まず理想的な伝達関数 H(s) を決定することから始まります。伝達関数は、フィルタの周波数応答特性を表します。

例:ローパスフィルタの伝達関数
H(s) = \(\frac{\omega_c}{s + \omega_c}\)
ここで、\(\omega_c\) はカットオフ周波数です。

2. 回路構成の選択

伝達関数が決まったら、それを実現する回路構成を選びます。一般的な構成には、アクティブフィルタ(オペアンプを使用)とパッシブフィルタ(受動素子のみを使用)があります。

  • アクティブフィルタ:オペアンプ、抵抗、コンデンサを使用してフィルタを構成します。例えば、サレンキー型ローパスフィルタは、オペアンプを用いた代表的なアクティブフィルタです。
    H(s) = \(\frac{1}{s^2 + \frac{\omega_c}{Q}s + \omega_c^2}\)
    ここで、Q は品質係数です。
  • パッシブフィルタ:抵抗、インダクタ、コンデンサを使用してフィルタを構成します。LCR直列回路や並列回路が典型的な例です。
3. 周波数特性の解析

設計したフィルタ回路の周波数応答を解析し、理想的な特性を持つかどうかを確認します。シミュレーションツールを使用して、周波数応答、位相応答、ゲイン特性を評価します。

  • ゲイン特性|H(jω)| = \(\frac{\omega_c}{\sqrt{\omega^2 + \omega_c^2}}\)
    ローパスフィルタのゲイン特性は、カットオフ周波数を境に急激に減少します。
  • 位相特性\(\angle H(jω) = -\tan^{-1}\left(\frac{\omega}{\omega_c}\right)\)
    位相特性は、周波数が増加するにつれて遅延が増加します。

具体的な設計例

1. ローパスフィルタの設計
  • 要件:カットオフ周波数が1kHz、品質係数 Q = 0.707 のローパスフィルタを設計します。
  • 伝達関数H(s) = \(\frac{1}{s^2 + 1.414s + 1}\)
  • 回路構成:サレンキー型ローパスフィルタを選択。
  • 解析:シミュレーションツールで周波数応答を解析し、1kHzでの減衰が確認できるか評価。
2. バンドパスフィルタの設計
  • 要件:中心周波数が10kHz、帯域幅が2kHzのバンドパスフィルタを設計します。
  • 伝達関数H(s) = \(\frac{\omega_0/Q}{s^2 + (\omega_0/Q)s + \omega_0^2}\)
  • 回路構成:アクティブフィルタを選択し、オペアンプを使用。
  • 解析:シミュレーションツールで中心周波数10kHzでのゲインを最大とし、±1kHzの帯域幅で減衰することを確認。
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